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電動バイクの普及

バイクの2035年問題について耳にしたことがあるでしょうか。世界において脱炭素化が求められている現在、バイクの電動化は注目を集めています。しかし、電動化には多くの課題があることから、日本ではなかなか普及していない現状もあります。

バイクの2035年問題とは

「バイクの2035年問題」は、2020年12月8日に東京都小池都知事が発表した「脱炭素社会の実現」によって生まれました。取り組み内容には脱炭素化のため「東京都で新車販売される二輪車すべてを、2035年までに非ガソリン化する」というものもあり、「2035年以降、東京都ではガソリンエンジンを使用した新車バイクは販売不可になる」と各バイクメーカーに衝撃を与えています。

ただし現状販売されているガソリンバイク現行モデルが全て販売不可になる、構造的に電動化には不利な点が多いなど多くの課題があり、実現については厳しい部分もあるという意見が多いようです。また、アフターパーツメーカーやバイク用品企業が大きく損害を被る可能性も否めません。

もともと東京都ではゼロエミッション・ビークル普及のため、2018年よりガソリンを使用しない二輪車や四輪車の普及を促進していました。ところが小池都知事が「2035年までに100%非ガソリン化」という姿勢を見せたため、メーカーはガソリンを使用しないバイクの生産をより具体的に検討し始めたのです。

たとえば川崎重工では、日本などで販売するバイクの主要機種を2035年までに電動化すると発表。ヤマハやホンダでは既に電動バイクの生産に着手していたものの、他メーカーも電動化に取り組まざるを得ない状況となりました。

電動バイクとSDGsの関係

環境保全や貧困問題など、多岐にわたる分野の世界共通の持続可能な目標「SDGs」。実は電動バイクの普及との親和性も高いのが特徴です。

走行時に排気ガスを出さない

電動バイクの最大の特徴は、電気モーターを動力源としていることです。電気を発電する際に多少のCO2(温室効果ガス)は発生しますが、走行時には排気ガスを一切出さないので、SDGsの目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」や、同目標13「気候変動に具体的な対策を」の実現に貢献します。電動バイクはガソリン車と比べて、環境にもお財布にも優しい乗り物です。

電動バイクは環境負荷の軽減に貢献する

蓄電池(バッテリー)に貯めた電気をエネルギー源として走行する電動バイク。現在、バッテリーの性能は日進月歩で進化しており、今後、使い捨てではなく、再利用可能なバッテリー技術が確立することによって、電動バイクにおけるエネルギー・資源の消費量削減が可能となり、SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」、同目標15「陸の豊かさも守ろう」の実現にそれぞれ貢献することができます。

騒音問題の解決に貢献

電気モーターを動力源とする電動バイクは、ガソリンエンジン車のように排気音が発生せず、走行音が静粛なのも特徴の一つです。多少のモーター音は発生しますが、「うるさい」と感じるほどではなく、騒音問題の解決にも貢献します。そして騒音問題への貢献を通じて、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくり」の実現にも貢献可能です。

現在は世界的に電動化シフト傾向にある

2035年問題ではバイクの電動化の難しさが浮き彫りとなりましたが、世界では電動化にシフトしています。その背景には排ガス規制の厳格化やカーボンニュートラルがあり、海外では大手メーカーも電動バイクの生産に着手しているようです。

たとえばバイクの生産が多いことで知られるインドでは、大気汚染などの問題によりバイクの電動化が進められています。電動バイク開発・製造への補助金制度も設けられており、今後もバイクの電動化は進むでしょう。

電動バイクの今後

株式会社矢野経済研究所が公表したデータによると、世界における2020年度の二輪車全体台数は5,557万台。そのうち約5%にあたる266万3千台が電動化されています。電動化は今後さらに進むといわれており、2030年には二輪車全体台数6,576万3千台のうち約20%にあたる1,305万台が電動化される見通しです。

電動化が進む背景には環境規制があり、どの国においても環境汚染に配慮した電動バイクの普及が望まれます。電気自動車と比較して電動バイクは新興国でも普及が見込めるため、世界規模での電動化が予測されています。

電動バイクが普及しづらい理由

ただ、電動バイクの普及はそう簡単ではありません。現状、電動バイクには「航続距離が短い」という大きな弱点があります。航続距離を長くするためにはバッテリーの容量を大きくする必要がありますが、容量を大きくするとバッテリー自体も大きくなり、車体重量が増え、航続距離が短くなる…という悩みを抱えているのです。

たとえバッテリーを大きくする代わりにボディやフレームの軽量化を図ったとしても、それほどの影響力は期待できません。そのため、電動バイクの航続距離を伸ばすためには、交換用バッテリーを使用するか、バッテリーそのものの性能をアップさせるしか手がないのが現状です。

また、電動バイクの普及によってマフラーなどのカスタムパーツが不要になります。カスタムパーツの必要性がなくなることで不満を抱くライダーは少なくないうえ、バイク用品を扱う企業にとっても打撃を与えます。
このように電動バイクの普及ではさまざまな問題を抱えており、なかなか進んでいないのが現状です。

業界における取り組み

電動バイクの普及は思うように進んでいないものの、日本の各メーカーでは電動バイクの開発・製造に取り組んでいます。

ヤマハ

2002年には電動バイク「パッソル」の販売を開始しました。その後も電動バイクの開発・製造を進め、「E-Vino」も発売。今後もカーボンニュートラル社会の実現に向け、電動バイクのラインナップ拡充と普及などに注力しています。2030年には電動バイクの販売比率を20%にまで引き上げる目標です。

ホンダ

1994年に市販電動二輪車「CUV-ES」を発売。その後も電動バイクの開発・製造を進め、ビジネス向け電動バイク「BENLY e:」「GYRO e:」「GYRO CANOPY e:」などの販売も開始しました。また、交換可能なバッテリー「Mobile Power Pack」では航続距離と充電時間の問題に着手。今後も環境への取り組みの一環として電動バイクの普及を目指しています。

スズキ

技術だけを先走りさせるのではなく、一般的な生活者であるユーザーに沿った電動化に着手しています。2012年には原付一種の電動スクーター「e-Let's」を発売。今後も電動化技術を集中的に開発し、四輪自動車をメインとした電動化を目指しています。

カワサキ

カワサキモータース株式会社が2021年10月6日に発表した事業方針では、電動化の推進のため「2025年までに電動バイク10機種以上を導入」を掲げました。また「2035年までに先進国向け主要機種の電動化を完了」という方針も打ち出しており、電動化への取り組みを加速させる見通しです。 なお、カワサキの電動バイクの詳細については、2022年に改めて発表される予定です。